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ピアニスト 清水美子 プロフィール
群馬県太田市生まれ。桐朋学園大学音楽学部卒業。ピアノを二宮裕子氏に師事。大学在学中にジョージ・クラムの『マクロコスモス』第1巻に出会い感銘を受ける。大学卒業後、アメリカ、ニューヨーク州にあるイーストマン音楽学校へ、ロータリー財団奨学生として入学。同校で、アメリカを代表する現代音楽のピアニスト、デイヴィッド・バージ(David Burge)氏に師事(氏はクラムの友人であり、『マクロコスモス』第1巻を捧げられた人物でもある)。イーストマン音楽学校修士課程修了。
ソロピアニスト、及びイーストマン・ムジカ・ノーヴァ・アンサンブルのメンバーとしてこれまでに演奏してきた主な曲目は、A・シンドラー「私を連れて行って」、J・シュヴァントナー「琥珀色の音楽」、P・ヒンデミット「室内楽第1番」、K・レンドヴァイ「ピアノ・フルート・打楽器・ハープのための小協奏曲」、H・ハンソン「海の交響曲」(チェレスタ担当)、J・ハドソン「ピアノとテープのための反射」、J・ウォーカー「空間・ピアノのための変奏曲」、C・カーティス゠スミス「ラプソディー」、A・シルスビー「ドアーズ」、L・カーシュナー「ピアノソナタ」、E・カーター「チェロとピアノのためのソナタ」、T・アドルノ「3つのピアノ小品」「P.K.B.子供のための小組曲」「3つの短い小品」、M・レヴィナス「ピアノのための3つのエチュード」、H・カウエル「バンシー」「エオリアンハープ」、J・ケージ「ソナタとインターリュード」、D・バージ「胸を刺すような」・「快活な」・「フォークソング」(「24の前奏曲」より)「故郷」、八村義夫「ピアノのための即興曲」、田中聰「アフターワールド」「グリザイユ」「オラクル」等、多岐にわたる。
ジョージ・クラムとの出会い
思い出の日
清水美子
ある日、大学生だった私は、東京にあるアメリカンセンタ ーへ立ち寄った。当時はちょうど海外留学を考えはじめて いた時期で、アメリカの音楽学校について情報収集をす るのが目的だった。同センターに入るなり、ロビーの近く に文化紹介のコーナーがあるのに気づいた。近づいてみ ると、その一画だけ図書館のようになっていて、アメリカ人 作曲家の作品を収録したカセットテープが机の引き出し の中にぎっしりと並べられていた。カセットに書かれた作 曲家名や作品名にはわかるものもあったが、ジョン・ケー ジの隣にあった「マクロコスモスI」というタイトルには見覚 えがなかった。気になった私は、そのカセットテープを取り 出し、そばにあった試聴用プレイヤーに挿し込んで、ヘッド フォンを耳にあてて聴いてみることにした。
テープは日本語のナレーションから始まった。「マクロコス モスIは、アメリカを代表する作曲家ジョージ・クラムの作 品です。作曲者はこの曲をアメリカにおける現代音楽演奏 の第一人者であるピアニストのデイヴィッド・バージに捧 げました。このテープは、まさにそのバージ氏の演奏を収 録したものです......」
そして、音楽が始まった。
前打音を含む和音が7つ、低音部でゆっくり静かに上行 する。そして静かに弦をグリッサンドする音。再び7つの上 行する和音。なんとミステリアスで魅力的なはじまりだろ う。そう思った次の瞬間だった。ジャーン、という衝撃的な 音が私を襲った! これは、何!? 何を使った音!? 圧倒的な響きだった。その音は大きなうねりに発展し、み るみる私の体を別世界へ、暗い神秘の奈落へと引きずり 込んでいった。
そのあと各曲が演奏されていくにつれ、さらなるイメージ が浮かび上がっていった。地球の起源、暗黒、神、星々、静 けさ、いとおしさ。まるで、宇宙の映画を観ているかのよう だった。全12曲を聞き終えた時、私の鼓動は高鳴り、し ばらくその場を離れることが出来なかった。
こうしてクラムの音楽にすっかり魅了された私は、ついに アメリカ・ニューヨーク州にあるイーストマン音楽学校の デイヴィッド・バージ氏の元へと留学する事になる。バー ジ氏はクラムの音楽の信頼のおける演奏者であるだけで なく、クラムの最も親しい友人でもあるのだ。バージ氏か ら大きな影響を受けた私は、クラムの世界に足を踏み入 れる事になった。
マクロコスモスに出会って、いったいどれくらいの年月が 過ぎたことだろう。でも、あの日の事は昨日の事のように 憶えている。私の運命を変えた、あの不思議な力を持つ音 色は、今でも私の心を捉えて離さない。