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  • Shimizu Yoshiko

マクロコスモス第1巻〜第3巻の曲目解説書(国内盤CD向け)    

「ジョージ・クラムの 90 歳の誕生日に寄せて」 8 月のある日、半年ぶりにクラムに電話をした。もしクラムが元気でなかったらどうしよう、という一抹の不安もあったが、最初に電話に出た奥さんのエリザベスの明るく元気な声、そしてクラムのいつもの優しく穏やかな声にほっとした。「ぼくはようやく Metamorphoses の第二巻を書き終えたよ!」とクラムは言った。彼は数年前から新作にと りかかっていたのだ。この歳になってもいまだ衰えを見せない彼の創作熱には畏敬の念を 禁じ得ない。「あなたの90歳のお誕生日に合わせて、私のCDの国内盤が発売されるんですよ」と伝えると、「おお、それはおめでとう!」と、とても喜んでくれた。「それが出来たら、僕も1枚もらえるかな」「もちろんです」。 クラムは、奥さんと息子さんと3 頭の犬と 一緒に暮らしている。近くには娘さんも住み、 頻繁に通ってくれている。「このとおり、僕はなかなか外には出られないから、是非またうちに遊びにきてほしい」。そう、是非また会えたらと思う。いつまでも元気で、すばらしい音楽を私たちに送り届けてほしい。90 歳のお誕生日、本当におめでとう! (清水美子)

プログラム

ジョージ・クラム(George Crumb 1929 - ) 作曲 マクロコスモス I アンプリファイド・ピアノのための 黄道十二宮にちなむ 12 の幻想曲集(1972)


第1部 1. 太古の響き(創世 I)「蟹座」 2. プロテウス「魚座」 3. 牧歌(紀元前 1 万年頃のアトランティス王 国から)「牡牛座」 4. 十字架上のキリスト「山羊座」

第2部 5. 幽霊ゴンドラの船頭「蠍座」 6. 夜の呪文 I「射手座」 7. 影の音楽(エオリアンハープのための) 「天秤座」 8. 無限からなる魔法の円環(無窮動)「獅子座」

第3部 9. 時の深淵「乙女座」 10. 春の炎「牡羊座」 11. 夢の影像(愛/死の音楽)「双子座」

12. 螺旋の銀河「水瓶座」


マクロコスモス II

アンプリファイド・ピアノのための黄道十二 宮にちなむ 12 の幻想曲集(1973)

第1部 1. 朝の音楽(創世 II)「蟹座」 2. 神秘のコード「射手座」 3. 雨/死の変奏曲「魚座」 4. 双子の太陽(永遠からのドッペルゲンガー) 「双子座」

第2部 5. 幽霊の夜想曲:ストーンヘンジのドルイド 僧のための(夜の呪文 II)「乙女座」 6. ガーゴイル「牡牛座」 7. トラ!トラ!トラ!(黙示録的カデンツァ) 「蠍座」 8. ノストラダムスの予言「牡羊座」

第3部 9. 宇宙の風「天秤座」

10.“北の冠座”からの声「水瓶座」

11. 銀河の鐘の連祷「獅子座」 12. アグヌス・デイ「山羊座」


夏の夜の音楽 (マクロコスモス III) 2 台のアンプリファイド・ピアノと打楽器のための(1974)

1. 夜の響き(目醒め)

2. さすらい人幻想曲

3. 降臨 4. 神話 5. 星降る夜の音楽

*「マクロコスモス III」は、本来、2 人のピアニスト と 2 人の打楽器奏者の計 4 名で演奏される曲である が、本 CD ではピアニストの清水美子と打楽器奏者の ルパート・ストルーバーがそれぞれ 1 人 2 役で演奏し、 日本・オーストリア両国での多重録音により完成させ た。この曲における多重録音は世界初の試みである。

ジョージ・クラム アメリカの作曲家。1929 年 10 月 24 日、ウ エストヴァージニア州のチャールストンに生 まれる。ペンシルヴァニア州メディアに在住。

「マクロコスモス」について ベラ・バルトークの「ミクロコスモス」に 呼応するように名づけられたジョージ・クラ ムの「マクロコスモス」は、第 1 巻から第 4 巻まで存在する。第 1 巻、第 2 巻はピアノソ ロ曲、「夏の夜の音楽」と題された第 3 巻は 2 台のピアノと 2 名のパーカショニストのため の曲、「天界の力学」と題した第 4 巻はピアノ 連弾の曲である。本 CD は、第 1 巻から第 3 巻までを収録する。

マクロコスモス 第 1 巻、第 2 巻 黄道 12 宮にちなんで作曲された第 1 巻及び 第 2 巻は、両巻合わせて計 24 曲となる。クラ ムはこの作品のなかに、宇宙的イメージのみ ならず、キリスト教、古代から現代に至る東 西の様々な宗教や信仰や文化、あるいは神々 や霊魂、オカルト的現象をめぐるイメージを 取り込んでいる。両巻とも各 12 曲は 4 曲ず つ、3 つの部分に分けられ、各部分の最初の曲(No.1,No.5.No.9)は必ず、日常的な小物を使っ たピアノの内部奏法が指示される。また各部 分末尾の曲(No.4,No.8,No.12)は [ シンボル ] と記され、印象的な図形楽譜が用いられてお り、楽譜は一種の視覚的作品としても創り上 げられている。 それぞれの曲の最後には、謎めいたイニシャ ルと記号が付されている。それは、その曲に ちなんだ星座の元に生まれたクラムの友人や 家族、敬愛する作曲家のイニシャルであり、 記号は星座を表す。この解説書ではその人達 の名前を明記した。また、第 1 巻の冒頭には ベラ・バルトーク、第 2 巻の冒頭にはグスタフ・ マーラーを追悼してイニシャルが付されてい る。


マクロコスモス 第 1 巻

アンプリファイド・ピアノのための黄道十二 宮にちなむ 12 の幻想曲集 

(私の友人、デイヴィッド・バージのために) (ベラ・バルトークを追悼して)

第1部 1. 太古の響き(創世 I)「蟹座」 G.R. (George Rochberg, 友人、作曲家 )

軽いメタルチェーンを低音部の弦の上に乗 せ、太い弦に共振させた独特の音で「太古の 響き」を描いている。


2. プロテウス「魚座」 W.R.C. (William R. Crumb クラムの弟 )

「プロテウス」とはギリシア神話の海神。預言の力と自由に姿を変える力を備えている。ソ ステヌートペダルを使って低音部のダンパー を解放する事により、「プロテウス」の機敏で 変幻自在な動きが効果的に描かれる。


3. 牧歌(紀元前 1 万年頃のアトランティス王 国から)「牡牛座」 J.B. (Johannes Brahms, 作曲家 )

古代ギリシアのプラトンが記した、失われ た大陸「アトランティス」。シンコペーション のリズムは、ドビュッシーの“喜びの島”を 思い起こさせる。この「喜びの島」もまた、 ギリシアのキテラ島に由来するものだ。


4. 十字架上のキリスト [ シンボル ]「山羊座」 R.L.F. (Ross Lee Finney, クラムの師、 作曲家 )

楽譜は十字架の形をしている。水平に書か れた楽譜を左から右へ進み、次に「クリステ(キ リスト)!」の叫びと共に、縦線に書かれた 楽譜を、下から上へと進んで行く。


第2部 5. 幽霊ゴンドラの船頭「蠍座」 G.H.C. (George Henry Crumb、クラム 自身)

トーマス・マンの『ヴェニスに死す』を思い起こさせる曲である。弦のトレモロは、不 吉な象徴としてのマンドリンの調べを表す。 奏者が唱える「イリミル! カラブラオ! ハス ハス!」はベルリオーズの「ファウストの劫罰」 ( シーン 19、伏魔殿にて ) からの引用である。

6. 夜の呪文 I「射手座」 A.W. (Anton Webern、作曲家)

夜の静寂、鳥の声、アパラチアの谷にこだ まするメロディー、慣れ親しんだ歌。作曲者 クラムの心象風景を描いた曲と言えるだろう。 口笛で奏されるのは「私がかぶせられた王冠 の中にいくつかの星があるのだろうか?」と いう賛美歌のメロディーだ。


7. 影の音楽(エオリアンハープのための) 「天秤座」 (P.Z. Paul Zukofsky、ヴァイオリニスト、 友人 )

ピアノの内部奏法の先駆者であるアメリカ の作曲家ヘンリー・カウエルの「エオリアン・ ハープ」(1923)を思い起こさせる。


8. 無限からなる魔法の円環(無窮動)「獅子座」 C.D. (Claude Debussy 作曲家)

「輝く光」と示された fff の和音とそのエ コー。円形に書かれた楽譜は 3 と 3 分の 1 周 演奏される。


第3部 9. 時の深淵「乙女座」 A.S. (Arnold Schönberg、作曲家)

曲中、奏者は「テンプス(時)」、「アニムス (霊魂)」、「ヴェリタス(真実)」、「モース(死)」と唱え、弦の第 5 倍音を鳴らす。


10. 春の炎「牡羊座」 D.R.B. (David Russell Burge ピアニスト、友人)

曲に付けられたイニシャル「D.R.B」は、私 の師でもあったピアニストのデイヴィッド・ バージを指す。彼の高度なピアノテクニックと 溢れるパワーは「春の炎」にぴったりだ。マ クロコスモス第 1 巻はこのバージに捧げられ た。彼は 1930 年 3 月 25 日に生まれ、2013 年 4 月 1 日にこの世を去った。真の牡羊座で ある。


11. 夢の影像(愛/死の音楽)「双子座」

F.G.L. (Federico Garcia Lorca 詩人)

ショパンの「幻想即興曲」が引用される。 当初、ラフマニノフの「パガニーニの主題に よる狂詩曲・第 18 変奏」を引用する筈だった が、当時はまだ著作権保護期間のため使えず、 ショパンに変えたそうだ。クラムを訪ねた時、 クラムは私にラフマニノフ版を演奏してくれ た。それもまた、とても魅力的な曲だ。


12. 螺旋の銀河「水瓶座」 B.W. (Beatrice Wernick 友人)

タイトル通り、楽譜は螺旋(らせん)の形 をしている。右手の 5 連符と左手の 3 連符が 同時に静かに進み、広大な宇宙の「孤独」、そ してクラムの好きな言葉「timelessness of time」を表すかのようだ。

マクロコスモス第 2 巻

アンプリファイド・ピアノのための黄道十二 宮にちなむ 12 の幻想曲集 

( 私の友人ロバート・ミラーのために ) ( マーラーを追悼して )

第 1 部 1. 朝の音楽(創世 II)「蟹座」

J.DeG.W. (Jan DeGatani West:ソプラノ歌手、友人)

弦の上に紙を置き、ブンブンと唸るような 力強いピアノの音を作り出している。冒頭の モティーフは、「夏の夜の音楽」(マクロコス モス III)第 5 楽章の「調和の歌」とも繋がる。


2. 神秘のコード「射手座」 R.M. (Robert Miller ピアニスト、友人)

増 4 度を組み合わせたミステリアスな響き は、スクリャービンが提唱した「神秘和音」 と重なる。突然に遮る fff の暴力的な速いパッ セージは、ムソルグスキーの展覧会の絵の「小 人 Gnomus 」を思い起こさせる。後にクラム は「ノーミック・ヴァリエーション Gnomic Variation」(1981)で、増 4 度を重ねた主題 を提示している。


3. 雨 / 死のヴァリエーション「魚座」

F.C. (Frederick Chopin, 作曲家 )

16 分音符のスタッカートで刻まれる「雨」 に、3 連符や 5 連符の「死」が絡みながら進む。クラムが愛したスペインの詩人ガルシア・ロ ルカの描く「死」のイメージが見て取れる。


4. 双子の太陽(永遠からのドッペルゲンガー) 「双子座」 E.A.C.(Elizabeth Ann Crumb クラムの長女)

「ドッペルゲンガー」は自分そっくりの存在 を幻視する不吉な現象である。タイトルの「双 子の太陽」が示すように、この曲の楽譜は対 峙する 2 つの円で構成されている。


第2部 5. 幽霊の夜想曲:ストーンヘンジのドルイド 僧のための(夜の呪文 II)「乙女座」 A. B. (Anton Bruckner, 作曲家)

ドルイド ( ケルト文化における祭司を示す ) やストーンヘンジなどの語が、ゴーストのイ メージを豊かに膨らませる。ピアニストは鍵 盤のトリルを弾くと同時に、ガラスコップを 弦に強く押し当て前後に動かし独特な音を作る。


6. ガーゴイル「牡牛座」 P.P. (Paul Parmelee コロラド大学ピアノ 教師、友人)

怪物の姿をした魔除けの意匠「ガーゴイル」。 西洋の教会建築その他の屋根に見られる、雨 どいの役割を果たす彫刻である。曲中に現れ る 5 連符は、まるで人間を見下した妖怪の笑い声のようである。


7. トラ! トラ! トラ! (黙示録的カデンツァ)「蠍座」 L.K.(Lewis Kaplan ヴァイオリニスト、友人)

「トラ! トラ! トラ!」は、真珠湾攻撃 を行った際の日本軍の電信による暗号。太平洋 戦争はこの言葉とともに始まった。ちなみに 日米合作のアメリカ映画 Tora! Tora! Tora! が 公開されたのはベトナム戦争真っ只中の 1970 年だが、同年にクラムは弦楽 4 重奏「ブラック・ エンジェルス」を発表している。


8. ノストラダムスの予言「牡羊座」 [ シンボ ル ] H.W. (Howard Waltz コロラド大学の音 楽教師、友人)

楽譜の形は、クラムによれば「貝」だそう だ。中心部の楽譜は、左から右に演奏された後、 楽譜の上下を逆さにして演奏される。その結 果、ト音記号とハ音記号が入れ替わり、「怒り の日 Dies Irae」が音域を変えて現れる。


第3部 9. 宇宙の風「天秤座」

S.B. (Storm Bull コロラド大学での同僚、友人)


「宇宙の風」があるとしたら、こんな響きに なるのだろうか。奏者は、ドラム用のワイヤー ブラシで弦をグリッサンドし、指の腹で弦のトレモロをし、声にならない声で「ア - イ - ウ - シュ -」と発する。


10.“北の冠座”からの声「水瓶座」 E.M.C. (Elizabeth May Crumb クラムの妻)

「北の冠座」とは、ギリシア神話の中でディ オニューソスがクレタ島の王女アリアドネに 与えた王冠にちなんだ星座である。口笛は、 同じメロディーを「ノン・ヴィブラートで」「テ ルミンの様なヴィブラートで」「モンテヴェル ディのトリルのように」などと表情を変えな がら繰り返す。


11. 銀河の鐘の連祷「獅子座」 R.V. (Richard Valeta ピアノ教師、同じ町 に住む友人、)

「アパラチアの谷にこだまする」メロディー がここでも聞こえる。さらに、ベートーヴェ ンのピアノソナタ「ハンマークラヴィア」の ラルゴの断片が、この曲本来の完全 4 度のモ ティーフから浮かび上がる。


12. アグヌス・デイ「山羊座」 R.W. (Richard Wernick 作曲家、友人)

楽譜はピースマーク(1960 年代以降に起 こった反核、反戦運動に代表される平和を象徴 する形)を形取っている。ピアニストは曲中 で「神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、我 らをあわれみたまえ、我らに平安を与えたまえ」と唱える。楽譜冒頭の指示には「Prayer- Wheel」(マニ車、回転式経典)の言葉も付され、 この「アグヌス・デイ」が、キリスト教のみ ならず東洋思想及び異教を含めた広い解釈で の「平和の祈り」であると考えられる。


夏の夜の音楽(マクロコスモス III) 2 台のアンプリファイド・ピアノと打楽器 (2 人の奏者)のための

クラム自身が「マクロコスモス I-III」を「三 部作」と呼んだ事からも分かるように、「マク ロコスモス III」は「マクロコスモス I」と「II」 を展開させたものと考えられる。第 1、第 3、 第 5 楽章ではそれぞれ、クァジーモド(イタ リアの詩人)、パスカル、リルケの書いた言葉 が引用されている。曲全体で演奏される打楽 器は 30 種以上に及ぶ。この曲は、本来、2 人 のピアニストと 2 人の打楽器奏者の計 4 名で 演奏されるものであり、それは、クラムの敬 愛する作曲家ベラ・バルトークの「2 台のピア ノと打楽器のためのソナタ」(1937)に倣っ た編成である。が、本 CD では、ピアニスト の清水美子と打楽器奏者のルパート・ストルー バーがそれぞれ 1 人 2 役で演奏し、日本・オー ストリア両国での多重録音により完成させた。 この曲における多重録音は世界初の試みであ る。


1. 夜の響き(目醒め) ”かすかに谺(こだま)が聞こえてくる、星影の水に、満ちあふれた夜の忘却よ。” (クァジーモド “ユリシーズの島”より 河島英昭訳)

ピアノのソロが始まると間もなく、3 種の日 本の“鈴”( りん ) がタムタムやヴィブラフォ ンを伴って現れる。曲中この“鈴の形”は 3 度繰り返され、4 度目は「夏の夜の音楽」第 5 楽章(終曲)の最後で現れ、「夏の夜の音楽」 全体の統一感を示している。曲は、二羽の鳥 が互いに呼び合いながら目覚めるかのように 始まる。鳥たちの声は重なり、星影に映し出 された水面は輝きながら揺れ、次第にそのエ ネルギーは高揚する。目醒めたすべてのエネ ルギーはカオスとなって洪水のように爆発し、 宇宙に吸い寄せられて行くかのようだ。


2. さすらい人幻想曲

スライドホイッスルが短 7 度の跳躍進行で 現れ、さすらい人の不安定さを表す。短 3 度 の弦のピチカートは、マーラーの交響曲 5 番「ア ダージェット」のハープによる 3 度を思い起 こさせる。


3. 降臨

”永遠に沈黙するこの無限の空間、それを前 にして私は戦慄する” (パスカル 『パンセ 』 塩川徹也訳)

曲の前半は、「夏の夜の音楽」の核となる 2 つの音 F ♯(嬰ヘ短調として)と D ♯(嬰ニ 短調として)を軸に構成される。後半はマク ロコスモス II の No.4「双子の太陽」を展開さ せたものであり「スターチャイルド誕生の賛 美歌」が流れる。ヴィレッジヴォイス誌での レイトン・ケルナー氏のレビュー(1975 年 1 月 20 日)によれば、クラムは「夏の夜の音 楽」の演奏会終了後のインタビューで、楽譜 に記されている「スターチャイルド」につい て、「スターチャイルドはキリストでもなく、 『2001 年、宇宙の旅』の地球を乗っ取る宇宙 からの征服者でもなく、偉大なる“希望”(great “hope”)という概念なのです」と述べたそうだ。


4. 神話

全体が 39 小節から成る楽譜は、20 小節目 を中心にして左右対称に書かれている。この左 右対称の構成はすでにクラムの「ピアノのため の 5 つの小曲 Five Pieces for Piano」(1962) の第 3 楽章に見られる。曲中では 3 つのイソ リズム(定型の反復するリズム)が使われて いる。パーカッション I の 13 小節間、パーカッ ション II の 11 小節間、ピアノの 11 小節間で ある。


5. 星降る夜の音楽

”そして夜々には 重たい地球が あらゆる星 の群から 寂寥のなかへ落ちる われわれはみんな 落ちる。けれども ただひとり この落下を 限りなくやさしく その両手に支えている者 がある”” (リルケ 形象集 秋 より  富士川英郎訳)

ピアノの弦の上に紙を置いて演奏している。 曲中、バッハの平均律第 2 巻の嬰二短調のフー ガのテーマが現れる。このテーマは曲後半で は形を変え、口笛のメロディーやピアノの連 続する和音の中にも現れる。後半に提示され る「調和の歌」は繰り返されながら完全 5 度 のドローンと共に高揚し、次第に消えていく。 あたかもマーラーの大地の歌「告別」のエン ディング“Ewig、Ewig(永遠に、永遠に)...” のように。 (解説 清水美子)

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